カヌー科学館

 バンディットの重心・浮力 シミュレーション 

   pb_home 
 

 メニュー [1] はじめに  [2] 艇の形状測定  [3] 重心と浮力  [4] シミュレーションの原理
 [5] 波の影響  [6] 結果
 

 [1] はじめに

 2010.10.20 個人輸入で ソロ艇 NRSバンディットを入手し 10.27 多摩川 御岳で進水、初漕ぎを行った。
 今まで少ないながらも乗ったことがある艇とあまりにも大きな操縦性の差があるのに驚いた。
 購入前から、使っている方の感想として 前が浮き上がり気味、軽く くるくる回る等があったが、まさに実感。

 しかし、回転性を犠牲にしても 安定性を向上させることは出来ないかと強く感じた。
 同行のKenさんと艇を交換し撮影すると、バウが大きく持ち上がり、スターンが沈んでいる状況をつぶさに確認。
 帰宅後、次回のためにシートポジションを1スパン(13cm)前にずらした。
 

 前が浮いているようだ。これだと前からの波での影響を受けやすいのは当然なのを認識。改善を思いつく
 

 後ろが沈み気味。艇の長さから見た目のシート位置は、適正のように思えるが。諸先輩の写真を見てもこのような感じ

 以前大井川で3人乗りで沈し、再乗艇後下流で待つ2人を迎えに漕ぐ姿。最後部に乗りウイリー状態、パドリングで前が左右に50cmほど左右に振れ不安定だったのを思い出した。
 

 

 NRS社のBandit Tのサイトの 激流を下るビデオをキャプチャ。


 最初にセットしたシートポジション。
 

 左2枚を 長さ、傾きを合わせ合成して比較してみた

 これから見ると、セットしたポジションは、NRS社のビデオの位置より100mm前側 だということが解った。
 あながち、最初のセット位置が後ろ過ぎたのではないだろう。

 BanditT 全長 2921mm

画像から人の重心位置と思われる位置までを計測

 NRS社重心位置 前から59%、  1720mm
 最初のポジション     55.5% 1620mm
 先ずは、艇の形状を測定し、重心位置を変えることにより前後の傾斜の変化をシミュレーションしてみることを思いつく。

 [ シミュレーション手順 概要 ]

 1) 艇の形状を測定。 

 2) Microsoft Excel でシミュレーションする。
  ・ シート位置の差での艇の傾き
  ・ 前からの波の衝撃加算での艇の傾き影響度

 3) 静水での艇の重心位置の変化による傾き実測

 4) 流水での漕艇感覚検証

 5) 場合によっては、同様手順で今まで使用してきたタンデム艇 エアー社 ストライク2で同様の分析

 [ シミュレーション手法検討 ]


 1 形状定義方式
  艇の形状測定に当たり、どのような方式で計算、シミュレーションするかを検討する
 
 方式 正確さ 簡易さ Excel適合性 実現性  採用  備考
曲線近似式による体積算出 × ×   3次元体積計算・浮力積分
直線近似式(領域分割)による体積算出   上記またはメッシュ化算出
メッシュ化 Excel表参照(Lookup)関数使用

 2 艇の形状測定
  ・ メッシュ化単位での断面形状を測定し近似する
  ・ 測定ジグを製作し測定 : 自立直角定規、 スケール・バー
   写真撮影し、外形の寸法を画像情報から測定することを考えたが、3次元形状の把握が困難と判断しとりやめ。
  ・ 前後、左右はほぼ対称のように見える。 初めに検証し測定ポイントを1/4にできるか?
    幅方向は全域測定の方が精度出しやすいので、長さ方向のみ1/2測定するか?
   → 実測を始めた感触により全領域測定した。

 3 メッシュ化方式詳細
  ・ 10cmメッシュ化 : 艇長 2.92mと長く、外形曲率も大きいので 10cm単位で充分
  ・ 傾きがある場合、水平方向の長さが変わるのが、傾きの大きさは小さいので変化しないものとして計算する
   ( 三角関数の性質から sin θ ≒ θ [ θが小さい範囲 ]を 応用 ;
                  10度の傾きの場合長さ方向は 98.5%にしか変化しない )

 4 重心位置
  以下の加重を合成した重心と質量(重さ)を求める。
  ・ 艇の重心
  ・ 搭乗者の重心
  ・ 積載荷物の重心
  ・ バウへの水の衝撃の加重換算。 波が当たった上方向の分力と位置から衝撃重心(造語)を算出
   ( この衝撃力を、艇の傾きとの相関で観察する : 傾きの差による影響度の変化 )

 * 重心とは物体を一点で支えたときに,ちょうど釣り合う点
 * 複数の重心を合成する式は rc = Σ ( mi * ri )/ M
   rc : 合成重心位置、 mi : 個々の質量、 ri : 個々の重心位置、 M : 合成質量 (全重量)

 5 浮力中心
  艇の水面下の体積によるアルキメデスの原理の浮力。
  艇の傾斜による前後の喫水の傾きからメッシュ化した領域の喫水以下の高さを求め、浮力を生ずる体積を求める
  それらを一点に合成した場合の重心と同様な意味合いの位置を浮力中心と称す

 6 重量バランス計算方式
  艇に乗る全ての質量と艇の浮力 および、重心と浮力の中心がバランスする状態の算出方法。
  自然現象ではこれらが自然にバランスする状態で姿勢が落ち着く。
  ・ Excel の ゴールシーク機能を利用 : 存在は知っていたが使用経験が無く、容易に出来るかトライできるかと考えたが、2つの変数のゴールを求めることは出来ないので 手動調整とした。
  ・ 質量と浮力が釣り合うよう艇の沈み方でバランスがとれる。
   重心位置と浮力中心位置が前後方向で一致するよう、艇が前後に傾く
   この 沈む量と傾きを手動で入力し、質量と浮力、重心・浮力位置が一致するよう調整する。
   この方法なら現時点でも計算式を設計できる構想が浮かんでいる。

 艇の形状測定を行った。 

.

 

  pb_home